夢の欠片ーパニック障害な私ー

パニック障害と不安障害を抱え、 なんとか生きている私の日常。

2017-10

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続・罪 (3)

 

「逝きましょう、さあ、逝きましょうよ。」

彼女は、毎夜、私の耳元で囁く。

「いっしょに、逝きましょう。」

やめて、聞きたくないのよ。

耳を塞いだって、その声は、防げやしない。

私の頭の中に、直接響いて来る。

「やめて、やめて・・・」

その時、目の前にナースコールが見えた。

それをつかむやいなや、力一杯、押した。

早く答えて!

私は、汗まみれになって、祈った。

「どうしました?」

「早く、来て!」

その瞬間、彼女は消えた。

 

前より少し強い安定剤が、処方された。

睡眠剤も変わった。

多少眠れるようになった。

とにかく、あの時間帯に目を覚まさないように、計算して、薬を飲むようにした。

おかげで、ここ一週間は、彼女に会っていない。

これで、ようやく、気が楽になった。

 

 

「ご主人が、会いたいと、言っておられますが、どうです?

お会いになりますか?」

主治医は、いきなり、そんな事を訊いた。

・・・・・

「すぐに、という訳ではありませんから、一度、考えておいてください。」

「はあ・・・」

会いたくない、と思う。

会うのが怖い。

顔を見たら、具合が悪くなるかもしれない。

いや、きっと発作を起こすに決まってる。

・・・ような気がする。

どうだろう?

よく、わからない・・・

彼は、今、どうしてるんだろう。

一人じゃ、なんにもできないのに、ご飯とか、洗濯とか、お義母さんに来てもらってるのかもしれない。

人の気持ちって、不思議だ。

こうして、離れてみると、そんなに、ひどい人とも思えない。

渦中にいる時は、あんなに、憎み、忌み、嫌い、恨み、いっそ、さっぱりといなくなってくれたらいいのに、と、四六時中、思っていた。

寝てるところを、眺めながら、今なら殺せるかも・・・

この人を、刺して、私も・・・って、

何度、そう思ったかしれやしない。

でも、できなかった。

ほんとは、いい人なんだって・・・

優しいひとだって、思いたかった。

心のどこかで、信じていたかった。

彼本来の姿に、いつか戻ってくれるに違いない。

もしも、そんな日が、いつか、来たら・・・

そうなったら、私たち、毎日幸せに、笑って暮していける。

って、夢でしかないかもしれないのに、1%でも、信じていられるなら、信じていられるだけ、信じていたかった。

 

ある日、主治医と夫と3人で、会った。

夫の顔を見るのが、怖い。

私は、ずっと俯いていた。

「ご主人は、ずっと、カウンセリングを受けに、いらしています。」

え、そうなの?

「俺が・・・

間違ってたのかもしれない。」

夫は、ぽつりと言った。

「・・・・・」

その言葉を、どう受け止めたらいいのか。

私は、何も言えなかった。

言葉が出てこなかった。

俯いたままだった。

夫もそれきり黙ったままだった。

 

「なんだって!

あいつに会ったのか?

なんで、また・・・」

「だって・・・

先生が、向こうが会いたいって、言ってるって、だから、一度、会ってみたらって・・・」

「お前、もう会うなよ。

誰のせいで、こんな事になったと思ってんだ。まったく、厚かましいやつだな。」

「・・・・・」

「ほら、お守り買って来てやったぞ。

早く、良くなるようにな。

氏神様の病気平癒のお守りだよ。」

「ん、ありがと・・・」

「さあ、これを、首に掛けとくんだ。

これで、もう大丈夫。

すぐに、良くなるからな。」

「・・・お兄ちゃん。」

「おい、泣くなよ、お前・・・」

 

そうね、元気にならなきゃ。

退院して、お兄ちゃんとこに、置いてもらおう。

そして、何か、私にでもできる仕事があったら、働いて、お金が、貯まったら、アパートでも探して・・・

私は、少し、勇気が出てきた。

談話室でコーヒーを飲みながら、窓の外を眺めていた。

もう、すっかり秋ね。

空には、いわし雲が、きれいに並んでいる。

談話室には、私の他には誰もいない。

私は、久々にゆったりとした気分になれて、ほっとしていた。

・・・のも、束の間。

いきなり、ドアが開いて、誰か入って来た。

あっ!

何?・・・あなた・・・なんで?

夫が、つかつかと、私の前までやって来た。

「おい、お前、このまま別れようって言うんじゃないだろうな。

お袋に、さんざん煩く言われて、カウンセリングとかに通ってるけど、もう、うんざりなんだよ。」

・・・・・

だ、だから何だって言うの・・・

私は、反射的に夫から顔を背けた。

「いつまでも、こんなとこで、病人面しやがって、さっさと帰って来いよ。

お前がいなきゃ、困るんだから。」

・・・・・

やめて、いや、聞きたくない・・・

・・・・・

「聞いてんのか?

おい、解ってんだろうな。

早いとこ、退院しろって言ってんだよ。」

夫は、今にも、つかみかかりそうな勢いでまくし立てる。

・・・やめて・・・

動悸が打つ。

全身から汗が噴出す。

震えがきた。

吐き気がする。

息ができない。

ああ、苦しい。

誰か、助けて・・・

私は床に蹲って、がたがた震えていた。

持っていたコーヒーの缶が転がり、床に茶色の液体が広がっていく。

「何してるんですか!」

ああ・・・看護士さんの声・・・

「勝手に入っては困ります。

さあ、出て、早く、出て行ってください。」

「なんだい、俺はあいつの夫だ。

何しようと、勝手だろ。」

「なんですって。

あの方は、ここの患者さんですよ。

あなたの奥さんだからって、手荒な真似をされちゃ困ります。」

そうこうするうち、何人か、看護士さんが入って来た。

「どうしました?」

「あっ、大変だ。」

「私、先生を呼んでくるわ。」

ああ、助かった・・・

私は、力無く、床に倒れ込んだ。

 

 <つづく>

 

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昌子

Author:昌子
パニック障害と不安障害になって、
10年が過ぎました。
大量の薬、副作用、家庭環境、
精神的虐待、自虐的心理状態・・・
などと闘ってきました。


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