夢の欠片ーパニック障害な私ー

パニック障害と不安障害を抱え、 なんとか生きている私の日常。

2017-10

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眠りの街・Second Version (2)



「どうぞ、お掛けください。」

天井から声がした。

目の前には、ATMに似た機械と、ソファーがあった。

座ってみると、素晴らしく、心地いい。

「お飲み物をどうぞ。」

ATMのモニターに、メニューが現れた。

カフェラテ、ストレートティー、グリーンティー、カモミールティー、ラムネ、ミルクシェイク、ミックスジュース、って、これ、私の好きな物ばかりだわ。

迷っちゃうわぁ。

どうしよう。

ああ、最近、飲んでないからカモミールティーにしよう。

「かいこまりました。」

ATMの右端の小さな扉が開き、カモミールティーが出てきた。

んー、美味しい。

そのうち、室内は、だんだん暗くなり、奥の壁にスクリーンが降りてきた。

「ドキュメント」

という文字とともに、映像が映し出された。

どうやら、出産のシーンらしかった。

カメラは、分娩台の上で、苦しそうに喘いでいる女性のアップを捉えた。

えっ!?

次に、病院の廊下を、行ったり来たりしている男性を映す。

ええっ!?

お母さん。

お父さん。

じゃあ、これから生まれてくるのは、私?

私は、スクリーンに、見入っていった。

それは、私の成長のドキュメントだ。

私に関わる人たちを、丁寧に記録している。

私が生まれて、喜んでいる両親。

おばあちゃん、おじいちゃん、お兄ちゃん・・・

私が成長していくまでの、数々のエピソードを、余すことなく、映し出していく。

自転車で転んで、怪我したこと。

友達と喧嘩したこと。

部活で、先輩に苛められたこと。

高校に受かったこと。

お母さんに反抗してたこと。

お父さんに叱られたこと。

様々なシーンが、懐かしさと共に、甦る。

ああ、そう、あんなこと、あったわ。

これも、覚えてる。

私は、知らず知らず、涙が溢れ、視界が歪んできた。

すると、ATMは、すかさず、ハンカチを出してくれた。

お母さん・・・

長いこと、電話もしていない。

私は、急に母の声が聞きたくなった。

今度は、電話機が出てきた。

受話器を取ると、呼び出し音が鳴っている。

「もしもし」

ああ、お母さんの声・・・

「あ、私・・・」

「まあ、どうしたの?

何か、あったの?

急に、電話かけてくるなんて・・・」

「ううん、何でもないの。」

涙が、止まらない。

「お母さんの・・・声、聞きたくなっちゃって・・・」

「なあに、珍しいこともあるもんね。

普段、全然、連絡してこない癖に。」

「この間、送ってくれた野菜、美味しかった。

荷物着いても、電話もしないで、ごめんね。」

「いやに、殊勝なこと、言って・・・

どうなの?

元気にしてんの?

変わりはない?」

「ええ、元気よ。

お母さんは、みんな、元気?」

「こっちは、相変わらずよ。」

「今度のお休みに、帰るわ。」

「そう!

じゃあ、あんたの好きな混ぜご飯でも作ろうかしら。」

「うん、うん、」

私は、だんだん鼻声になってきた。

「やだわ、この子ったら、泣いてるの?」

「帰る、絶対に帰るから・・・」

「ええ、みんなして、待ってるわ。」

受話器を置くや否や、私は、わっと、泣き伏した。

私、忘れてた。

こんなに思っていてくれる人がいること。

こんなに愛されてるってこと。

私、幸せなんだ。

彼のことは、もう、考えない。

好きな人を選べばいいのよ。

ああ、なんだか、すごく、すっきりした、いい気分。


いつの間にか、ソファはベッドに変わり、枕も、布団も出てきた。

柔らかな、心地いい音楽が流れ、室内の温度は少し暖かくなっていた。

私は、一切、何も、思い煩うことなく、安らかに、眠りに落ちていった。

それは、深く、穏やかな眠りだった。


どれくらい眠ったのだろう。

爽やかな朝の光に包まれて、私は目覚めた。

そこは、私の部屋だった。

夕べのことは、あれは、夢?

・・・だったのかしら?

夢にしては、はっきりしすぎている。

不思議な感覚に囚われたまま、いつものように、出かける仕度をした。

でも、なんだか、全部、吹っ切れた感じ。

私は、颯爽と、会社へ向かった。


「おい、君、ちょっと、待って。」

振り向くと、彼だった。

「君さ、誤解してない?

昨日のこと。」

「え?」

「彼女と、その、僕は何でもないんだ。」

「・・・・・」

「君に、勘違いされたままじゃ、困るから。」

「・・・・・」

「その、あの、ええと、今日、帰り、時間ある?」

「ええ。」

「じゃあ、さ、続きはその時に・・・」

彼は、にっこり笑って、先に駆けていった。


 <END>


 

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昌子

Author:昌子
パニック障害と不安障害になって、
10年が過ぎました。
大量の薬、副作用、家庭環境、
精神的虐待、自虐的心理状態・・・
などと闘ってきました。


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