夢の欠片ーパニック障害な私ー

パニック障害と不安障害を抱え、 なんとか生きている私の日常。

2017-08

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自動巻き腕時計

今でも戻ってきてほしい失くした物 ブログネタ:今でも戻ってきてほしい失くした物 参加中
本文はここから


今を去ること、30ん年前。

私は、高卒で就職し、社会人となったものの、

右も左も、東も西も、全く分からない事だらけ。

兎にも角にも、会社の仕事や、人間関係に慣れることに、必死だった。

何とか少しずつ、身の置き所を得てきた頃、

若者向けのクリスマス・パーティーが、某団体の主催で開かれ、

友達を誘い、興味津々で、出掛けてみた。

そこで一人の男性と知り合い、付き合いが始まった。

私、18歳、相手、20歳。

彼は、某鉄鋼関係の会社の独身寮に住んでいた。

今のような便利な世の中ではなかったので、連絡は、もっぱら、

向こうが公衆電話から掛けて来るという不便さであったが、

そんな事などものともせず、初めて現れたボーイフレンドと呼べる存在に、

ただただ、浮かれ、舞い上がり、まさに恋に恋するという有様である。

そして、ある日、戯れにお互いの腕時計を交換し、

私は、男物のそれをこれ見よがしに、つけて歩いた。

若い頃は、何かにつけ、無知で無防備、疑う事すら、微塵もなかった。

何回かデートを重ね、年を越し、私の誕生日が迫って来た。

当日の午後7時、駅地下で、待ち合わせをしていた。

しかし、待てど暮らせど、彼は現れない。

1時間くらいは、待っただろうか?

何しろ、こちらからは、連絡がつかないのだから、お手上げだ。

私は、彼の寮へ訪ねて行くことにした。

大体の場所は聞いていたので、バスに乗り、最寄りのバス停で降りた。

勤め先の会社を突き止め、まだ残業していた社員の方に、

寮の場所を訪ね、行ってみたのだが、そこには、彼はいなかった。

いや、住んでいなかったのだ。

少し行った所にある、団地に住んでいると教えられ、

かなりの距離を歩いて行った。

そこで見た物を、私は、今でも激しい衝撃と共に、

はっきりと、思い出すことができる。

やっとの思いで辿り着いた目的の場所に、その扉の横に、

男女二人の名前の書いてある表札が貼り付けてあったのだ。

疑う余地もなく、夫婦であろうその表札を、

私は、一体、どのくらい眺めていたことだろう。

寒風吹きすさぶ中、立ち尽くしたまま、微動だにできない。

私の頭脳は、一切の思考能力を失い、

ドアを叩くことも、踵を返すことも、選び取れない程、こう着してしまっていた。

どのくらい経ったものか、ふと我に返った私は、引き返す道を選んでいた。

大通りまで出て、タクシーを拾い、凍えた体を抱いて、帰宅した。

その長い一夜を、どんな思いで過ごしたものか、記憶は定かでない。

翌日、ラジオから、信じられないニュースが流れた。

昨夜、彼とその妻が、風呂釜の不完全燃焼によるガス中毒で、

亡くなったというものであった。

私は、凍りつき、耳を疑った。

彼の実年齢は、23歳であり、妻は20歳だった。

何もかも、嘘だったのだ。

私は、騙されていたのだ。

しかも、私が立ちすくんでいたあの時刻、あのドアの向こうで、

二人は、すでに亡くなっていたのだ。

取り替えたままの時計は、もう二度と戻ってはこない。

彼が、あの世へ、持って行ってしまったのだから・・・

あの時計は、祖母が、高校の入学祝いにくれたものだ。

自動巻きの高級品だった。

自分の愚かさと引き換えにするには、あまりにも惜しい。

祖母の私への思いがこもっていた。

高校時代のいろいろな思い出が詰まっていた。

私は、ひどく落胆し、自分を責めた。

この手に残された男物の時計が、憎らしくてならない。

3月、私は、一人で電車に乗り、まだ寒々しい鈍色の海へと、

それを葬ったのだが、この事件は、その後も長く私の心を覆い、

いつまで経っても晴れることはなかった。

取り戻せるものなら、あの腕時計に、もう一度会いたいと、

今でも、切実に願っている。



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テーマ:パニック障害(PD) - ジャンル:心と身体

コメント

1 ■面白かった

で、小説なの、事実なの(笑)?

どっちでもいいけど、よく出来ている。お見事。

1Q84は読みました?評判ですけど、私、読む気がしない。評論読んでみて、内容は大体分かって、宮本賢治さんが打ち立てた文芸評論の基準から見ても、私の目から見ても、意味のない作品だと思った。

2 ■Re:面白かった

>ヒョンさん

あははは^^
事実なのよね~、これが・・・絶妙でしょ?

ほーーーー
1Q84、私も読むつもりはないなぁ~
あまりにもメジャーなものって、なんかイヤ~
その手には、乗らないぞって、思っちゃう。(。-人-。)

3 ■無題

そんな事ってあるんですね。

画伯が18歳、ショックだったでしょうね。


少し旅に出ていました。お元気そうでなによりです。

4 ■無題

ドラマ以上にドラマチックな現実ってあるのよね、だから昌ちゃんの半生は大変だったんだね。
わかるわ・・・・私もそうだったから!

5 ■Re:無題

>taiさん

コメント、ありがとう~

あら~、お帰りなさいね。
ご無事で、何より・・・

そうそう、こんなこと、信じられないでしょ?
でも、現実なのよね~(@ ̄Д ̄@;)

6 ■Re:無題

>さらさん

うんうん、そうなのよ~(;^_^A

だから、あんまり小説とか、読む気しない。
自分の人生のほうが、よっぽど、面白いし~

7 ■Re:Re:無題

>昌子さんへ

面白いけど、ドラマを生きるのはやっぱしんどいよ、息が切れるよ~!!

8 ■Re:Re:Re:無題

>さらさん

言えてるね~~

ドラマの主人公は、しんどいっす!
「おしん」みたいだぁ~(-。-;)

9 ■お久しぶりです

すごい! ドラマティック!
当事者でないと本当の気持ちはわからないけど
いろんな意味で、心に残る出来事ですよね。

10 ■Re:お久しぶりです

>じゅじゅ。さん

おいでくださって、うれしい~です。

すごいっしょ?
火曜サスペンスどころじゃないっしょ?
まぁ、単に、私がバカだったで、済むハズが、
完璧なオチまで、付いてたからねぇ~(;´▽`A``

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Author:昌子
パニック障害と不安障害になって、
10年が過ぎました。
大量の薬、副作用、家庭環境、
精神的虐待、自虐的心理状態・・・
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